SigFox : 京セラコムが契約、SigFoxサービス25番目の国に



11月9日京セラコミュニケーションシステム(KCCS)SigFoxネットワークを日本で展開し、2017年2月から順次サービスを開始することを発表した。日本はこれでSigFoxサービス25番目の国となる。後述。

SigFoxは2019年創業の仏国ベンチャー業で、LPWANではもっとビジネスが先行し、上記のように25か国、約800万端末を設置済みとしている。通信速度は100bps(100ビット秒)と遅いが、通信範囲は都市部で約5㎞(最大約15㎞)、郊外では15㎞くらい(最大50㎞)とLPWANの中で最も広い。月額通信料金が$1.0-からと格安、また通信モジュールやゲートウェイも安く小型である。
SigFoxのビジネス形態はユニークで、SigFox自身は端末、通信、クラウドとそのアプリまですべての技術を保有していると言われているが、みずからは通信サービスとクラウドおよびクラウドアプリに限定している。ICや端末は条件付きオープンで、クラウドやクラウドアプリに関しても後述のように同様である。SigFox通信サービスは1国1社に限定、SigFoxネットワークオペレータ (SNO)として独占的に1国を任せている。例外は仏国と米国で、SigFox自身がSNOとなって通信サービスをしている。
SNOはサブとなるサービス会社を使うことも可能のようである。これは携帯通信キャリア(MNO;Mobile Network Operator)が MVNO(Mobile Virtual Network Operator)に携帯通信事業を許しているのと類似である。MVNOの主要業務が格安SIMや携帯端末販売が中心に対し、SigFoxではMVNO相当の企業は関連サービス(カスタマイズした端末とそのアプリケーションソフト販売、クラウドやクラウドアプリなど)で差別化を目指すことになのだろう。
SNOは自身のクラウドや開発プラットフォーム等の得意分野も提供するであろうが、ゲートウェイ(基地局)やバックホール(インターネット接続の姑息回線)及びその保守なども主要業務となる。

SigFox用の通信IC、通信モジュール、端末デバイス(センサー端末、ゲートウェイ)は契約をすればベンダーになることができる。SigFoxは各機器の機器をテストし、認定することで互接続性を保証している。これらのモジュールや機器は条件付きオープンとみなせる。ホームページ「makersのページで通信モジュールメーカリストが出るようにはなっているが、現在のところサポートエリア外の日本からはフィルターのためアクセスできない。KCCSがSigFoxパートナーになったので間もなくこのフィルターは解除されるであろう。
各国1社テリトリーなので、国毎に異なる法規制に起因するトラブルも避けられる。また通信モジュールや端末の価格争いを防止する意味も考えてのことであるのかもしれない。

SigFox通信送受信ICをATmelTISilicon Laboratoriesがすでに出荷済みである。SamsungもIoT用SoC Artekもサポートしている。2012年創業の台湾ICメーカM2MCOMM9月現在、SigFoxが認定作業中としている。サブG用通信ICにSigFox専用ソフト(プロトコルスタックなど)搭載だけのようなので、さらに幾つかのICメーカが追随する可能性も高い。なおSigFox通信ICは2ドル未満とのこと。近い将来IoT用SoC(低消費電力の{CPU+メモリー+IO}チップ)にSigFox通信機能搭載され、より安価な通信モジュールやセンサー端末を構成できるようになろう。
開発・評価キットはさまざまなメーカが提供しているが、TI Sigfox Boosterpackは$59.99-で購入でき、開発に必要な資料も同社ホームページで入手できる。Raspberry PiやArduinoとSigFox通信モジュールとSigFoxのキットも販売されAmazonから購入可能である。ただしこれらは電波法に定める技適取得製品がまだ無いようで、国内使用は注意が必要である。間もなくKCCSやそのパートナーが態勢を整え、技適を取得した通信モジュールや日本語のサポートが開始が見込まれる。
「年寄りが妄想するに、サブG帯通信ICのプロトコルスタックなどをダイナミックに書き換えられるようにすれば、使用可能な各種LPWANから最も条件の良い回線を選択することが可能となる。これは電力のスマートメータが最も安い電力メーカを選択できるようにするシステムが検討されており(使用量・時間で課金)、これと類似の仕組みが使えるはずであ。模試複数の通信方式が特徴を生かして並立した場合に限られるが。」


米国にSigFox直営で参入
SigFoxは本国のフランスについで米国のSigFoxネットワークを直営で展開している。201511ForbesのニュースにSigFoxはサンフランシスコ市(ビルの屋上)に20台のブリーフケースサイズのゲートウェイを設置することで、同市のほぼ全域をカバー完了し、2016年末までに米国サンフランシスコを含む主要10都市をサービスエリアとしてサービスするとしている。またカルフォニア州全体を1,500台のゲートウェイ(基地局)でカバーできると予測している。現在携帯通信回線基地局では約20,000台なので、その7.5%でカバーするSigFox通信範囲の広さを見せつける発言である。

Microsoft、IBMと提携
SigFox20164Microsoftとパートナー契約を結び、IoTクラウドサービスMicrosoft Azure IoT Hub利用できるようになった。Microsoft Azure IoT HubIoTクラウドの基本的なもの(開発佳境も含め)はすべてそろえており、ユーザは短期間でクラウドアプリを開発、稼働ができる。また20167IBMAIソフトWatsonSigFoxが使えるようになったとアナウンスしている。IBMLoRa Allianceの発起人でもあり、LoRaWANのクラウドサービスも提供している。同じ仕組み(Watson他)でLoRaSigFoxの両方をサポートすることになる。
SigFoxはクラウドとその開発環境も用意し、クラウドアプリを自社で開発しようとするユーザ(特に大規模システム)にとっては開発の自由度が大きく、思い通りのシステムを組むことができるようにしている。一方MicrosoftIBMがサービスするクラウドと開発環境、さらにAIのプラットフォームを手軽に使えるので、開発力に不安のあるユーザや短期間で稼働にこぎ着けたいユーザに最適である。SigFoxはクラウドサービスだけでなく駐車場管理やスマートメータなどのクラウド上のアプリも提供しているので、これを増強することになろう。SigFoxは柔軟にパートナーを確保し、顧客を囲い込み競合に打ち勝とうとしている。

SigFoxのアジア展開:シンガポール・台湾・韓国そして日本
2016年に入ってアジアへの展開が急である。20167月シンガポール政府のバックアップをうけたUnabizSigFoxビジネス展開のために2016年創業のベンチャー企業)とSigFoxおよびEngie3社はシンガポールでSigFoxサービスを展開するとアナウンスした。Engieは仏国を基盤とする世界第2位インフラ(電気ガス)や通信サービスの会社ベルギーのSigFoxネットワークオペレータ)である。
さらに翌81台湾でSigFoxUnabizSigFoxグローバルIoTと、テストベッドを台湾に設置のアナウンスをした。SigFoxネットワークを中核に、台湾電子産業のグローバルIoT、様々なアプリケーションのデモを示すことになる。なおEngieもバックアップするようである。この発表会には仏国と台湾の政府要人(フランス台湾大使、台湾経済大臣、台北市CIO)や大手電子機器メーカ、業界団体役員などが出席、両政府バックアップを演出した。
Unabizはシンガポールと台湾の両国でSNOビジネスを展開することになる。

韓国
まだSigFoxネットワークオペレータ契約を締結した会社はないが、韓国に対してもSigFoxは積極的である。20152月のSigFox Series DのインベスターにSK Telecom(前ページのようにLoRa WANを韓国99%のエリアをカバー済み)も出資者となっている。
資金調達にも力を入れ、Series Dは€100Mの資金調達でNTTドコモベンチャーズやインテルなども出資している。年内にもさらに同程度のファンデングを予定しているようである。またSamsungSigFox20166SigFoxとパートナー契約で、SigFoxに投資するとアナウンスしている。この契約をもとにSamsungはIoTチップARTEKでSigFoxサポートを表明している。 

京セラコミュニケーションシステム(KCCS) SigFox
KCCSは11月9日SigFoxを日本で展開し、LPWA(LPWAN)事業に参入するとアナウンスした。SigFoxのページも開設、2017年2月から都内を皮切りにSigFoxサービスをスタートし全国展開する。2020年までに端末デバイス1,500万台、売上100億円を目指すとしている。
この発表の中で既に40の企業と大学がパートナーとなっている。また柔軟なコネクティビティとアプリケーション開発を実現するHPE(Hewlett Packard Enteerprise) Universal IoT Platformを提供するとしている。十分な準備を整えてきたことがうかがえる。KCCSは上記のMicrosoftやIBMでなくHPを選択したようである。同社Green Office Unified Cloudをサービスとの関係は不明。
ソフトバンクの2016年末にLoRa WANサービスをスタートをアナウンスしたが、その後の情報はまだない。KCCSの2番目のLPWAN通信サービスアナウンスがあり、日本もIoT/M2M専用通信サービスが本格開始となり開始となったので、IoT/M2Mの世界で存在感を示す様々な展開を期待したい。

0 件のコメント:

コメントを投稿