LoRaWAN 全国展開済の韓国とこれから動き出す日本の違い


LoRa Alliance推進のオープンなLPWAN

LoRaWANの展開が最も進んでいる韓国と後進国日本の現状である。ソフトバンクのLoRaWANは日本で初めて全国展開されるLPWANになる。

LoRaWAN概要

LoRaWANは免許不要の920MHzのサブG帯域を使い、通信速度は最大200Kbpsと低速だが、ネットワーク構成や通信範囲は携帯回線とほぼ同じである。LoRaWANLoRaチップと通信モジュールを開発製造しているICメーカSemtechIBMが設立したLoRa Allianceが推進している。なおLoRaWANはオープンな規格なので、LoRaWAN通信モジュールやゲートウェイ(基地局)販売するにはLoRa Allianceの認証を受け、各ベンダー間の互換性を担保しなければならない。

LoRa関連の価格は言うまでもなく安価で、ゲートウェイ(基地局)@$3,000-、通信モジュール@$5.0-とされ、通信料も通信量によるが下記のように韓国SK Telecomの場合はサービスソフト込みで350ウォン/月(約33/月)からである。
LoRaWANの概要は http://matome.naver.jp/odai/2146415581960199101 を、また技術詳細は無線と高周波の技術をわかりやすく解説する技術誌RFワールド31に詳しく、その一部サンプルはインタネットでも読むことが可能である。


韓国SK Telecom

韓国最大の通信キャリアSK Telecomはこの6月までに、同国内の99%のエリアをLoRaWANネットワークでカバー出来ている。通信料金はAMIAutomated Metering Infrastructure 電力・水道・ガスメータなどの自動検針システム)やトラッキングサービス(人、もの、設備資産など)のソフト使用料込みで、350ウォンから2,000ウォン(約33/月から約185/月)である。ソフトサービスは2016年末までに20種(リアルタイム共用駐車場システム、マンホールモニタリングシステムなど)になるとのことである。
参考比較としてM2M用3GSIMの使用料(当然サービスソフトはない)を聞いている範囲で述べると、最安値で31,000/月、ボリュームでは200/月(通信速度200kbps)くらいである。


また1本のポールにLoRaWANLTE-M20163月全土敷設完了)の2種類のゲートウェイ(基地局)を設置し、100bps10Mbpsをシームレスにサービスが可能であるとともに、設置運用コストを大幅に引き下げている。このことからもLoRaWANは携帯回線とほぼ同等の通信エリアをサポートしていることが分かる。なおSK Telecomはすでの国際ローミングも積極的にすすめている。

このSK Telecom LoRaWANと提携して、Samsung大邱(テグ)広域市(人口約250万人、韓国4番目の都市)をサービステストベッドとしての実証試験を行う。ヘルスケア・メディカルサービスのクラウドプラットフォームとビッグデータ分析、さらに自動運転車向け電気自動車のインフラを検証するとしている。
これらのLoRaWAN展開は韓国政府の政策・方針に沿ったものとされている。


ソフトバンク;日本で最初の全国展開を表明

2016年912ソフトバンクがLoRa通信サービス開始を表明した。下記NTT西日本のLoRaWANフィールドトライアルをアナウンスに続くサービス宣言で、やっと日本国内でもLPWANの本格展開と期待をしている。海外に比べると周回遅れが明白なためか、それとも政府の後押しがないため、またはその両方でなのか、一般メディアはほとんど取り上げることはない。
発表では「LoRaWAN2016年度中に提供し、デバイスからアプリケーション、コンサルティング、に至るまでエンド・ツー・エンドのIoTソリューションを提供」としている。またパートナーはデバイス(端末、ゲートウェイなど)からクラウドまでをトータルでサービスサポートする仏Actility社、世界最大のEMS Hon Hai(鴻海精密工業、Activityの出資社)、SemtechLoRaチップ・通信モジュールベンダー、LoRa Alliance共同設立者)の3社である。これは国内にはソフトバンクのお眼鏡にかなう企業がないことを意味しているのではと懸念される。

NTT西日本
NTT西日本はソフトバンク以前の20167月にLoRaWAN取り組みをアナウンスし、関西地区「IoT向けLPWAネットワークのフィールドトライアルの実施」の参加企業募集中である。6月から参加企業の募集の受付を開始したLoRaWANのフィールド検証項目は以下の二つ。
a) LoRaWANを活用したIoTサービスに求められる機能、運用稼働等の検証
b) IoTサービスの利用シーン創出とビジネス性の検証
募集受付期間は20173月まで。
またNTT西日本はCeatec2016104日から開催)のブースでも積極的にLoRaWANをアピールしていた。今年末からスタートするソフトバンクLoRaWANと当面競合することになろう。

株式会社ソラコム:期待のベンチャー企業、2014年11月創業

ソラコムとLoRaWAN
ソラコムは2016年5月LoRaWANネットワーク事業に参入することを表明した。同時に㈱M2Bコミュニケーションズ(当時の社名はM2B通信企画)に出資をアナウンスした。M2Bコミュニケーションズは㈱エイビットの関連会社として2015年10月創業、通信サービス事業化に向けた調査・企画を事業としている。日本で最初のLoRa AllianceコントリビュータとしてLoRaWAN日本規格策定に関わっている。
ソラコムは同社の協力を得て、2016年7月から「LoRaWANを利用した実証試験キット」の販売を開始した。キットの内容はLoRaWANモジュール10台、LoRaゲートウェイ(屋内/屋外1台、SORACOM Air1枚、ゲートウェイ設置サービス、LoRa開発キットトレーニング(1日集合研修)、LoRa開発キットスタートコンサルティングから構成されている。

㈱ソラコムとは
株式会社ソラコムは201411月創業のベンチャー企業で、通信モジュール・SIMMVMOを含むモバイルからクラウドまでを、トータルで提供するIoT通信プラットフォーム「SORACOM」を提供している
積極的な資金調達で20166 シリーズB 24億円、翌月6億円などの増資で、現在の資本金は37億円となっている。この豊富な資金力もあってか、グローバル化を完了、120の国と地域のサービスを開始している。

SORACOM」ワールドワイド展開は完了している。20167月から「SORACOM」サービスを海外120の国と地域に拡大、同時に実証実験キット「SORACOM GlobalPoC(Proof of Concept)キット」の販売受付を開始すると発表した。キットの価格は49,800円で、SIMカード30枚、基本料金6か月分、データ通信料$300-が含まれている。1枚のSIMで上記のとおり120ヵ国以上の国と地域で利用できる。シンガポールオフィスも開設済である。

SORACOM」の通信モジュールはエイビック社3G USBドングルを採用、通信速度は下り数Mbps~数十Mbpsとしている。初期無線通信費用は980円からで、ネットワーク管理やセキュア通信のオプション、クラウドサービスも用意されており、M2M/IoTシステムに手軽にトライすることが可能である。(以上ソラコムホームページなどより)

LoRa Allianceの認定は受けていないが
以下の2社はLoRa技術を採用した製品を製造販売しているが、LoRa Allianceの認定を受けていない。独自のネットワークはセキュリティやシステムの自由度には良いが、すべて自力でサポートし続けなければならない。前例からはデファクトにならないと成功したケースはないので、これまでの経験を生かして標準仕様のLoRaWANに移行すべきではないかと考える。

大井電気は1950年創業、道会社・警察・国土交通省・防衛省の情報伝送機器開発、情報通信事業を中核としている。2015年井11通信タイプのLoRaWAN通信ユニット「2015OiNET-932」を開発・製造・発売中、超長距離基地局ユニットを20163月の「スマートエネルギーWeek2016」に参考出品している。

グリーンハウスはコンピュータ周辺機器、デジタルAV機器などの開発・製造・販売の会社である。開発製造は2013資本提携した㈱アールエフリンクである。モジュールはLoRaチップを採用しているが、独自の通信方式、独自のプロトコルスタックなどを採用しているため、LoRaWANとしての機能は持っていない。しかしアールエフリンクの通信ソフトやRF回路技術、アンテナ技術が優れているためと思われるが、160Kmという超長距離の実証実験に成功していると発表している。


次回はLoRaWAN概要

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