MTC(Cat1/0/M)
スマホ・携帯電話で使用されている携帯回線は周知のようにひたすら高速化を目指している。2G、3Gを経て2008年LTE(かつて3.9Gという表現もあった)に移行を開始した。現在はLTE-A(600M~1Gbps)、来年LTE-B (1Gbps:Advanced LTE、Huaweiは4.5Gと表現)、2020年には5G(10Gbps)のサービス開始が見込まれている。低速のLPWAとは別世界のようであるが、LPWAはLTE advanced ・5Gと高度化する携帯回線で、さらにその重要性を増す。
LTEではあらゆるデータ(音声、画像、データなど)をパケット方式で画一的に伝送している。一方MTCの用途は多様で、常時接続で途切れることなくビデオデータを送信するケースから、少ないデータ量を1回/月送信のような用途まである。多くは単一バッテリー10年間稼働という要請があり、間欠通信などで対応する必要がある。従って既存LTEの通信方式になじまない面が少なくない。MTCに最適化しあらゆる用途に応えるべく、3GPPはCat1/0/MおよびNB-IoTっを策定した。
LTEではあらゆるデータ(音声、画像、データなど)をパケット方式で画一的に伝送している。一方MTCの用途は多様で、常時接続で途切れることなくビデオデータを送信するケースから、少ないデータ量を1回/月送信のような用途まである。多くは単一バッテリー10年間稼働という要請があり、間欠通信などで対応する必要がある。従って既存LTEの通信方式になじまない面が少なくない。MTCに最適化しあらゆる用途に応えるべく、3GPPはCat1/0/MおよびNB-IoTっを策定した。
MTC(Machine Type Communication)
3GPPのMTCはM2M(Machine to Machine)だけでなく、H2M(Human to Machine)やM2H(Machine to Human)も包含して名付けているようなので、M2M/IoTとほぼ同義語である。従って3GPPが規定している携帯回線のこのページではMTCを使用する。
通信速度(下り/上り) 使用帯域幅 モデムの複さ*
2008年 Rel8 LTE-Cat4 300M/75Mbps 20MHz 125%
LTE-Cat1 10M/5Mbps 20MHz 100%
LTE-Cat1 10M/5Mbps 20MHz 100%
2014年 Rel12 LTE-Cat0 1Mbps 20MHz 50%
2016年 Rel13 Cat-M 1Mbps 1.4MHz 25%
NB-IoT ~200Kbps バンドギャップ使用 12.5%
EC-GSM-IoT 割愛**
2012年 MTC要求仕様書「22.358」第1版 Rel10に反映
2012年 MTC要求仕様書「22.358」第1版 Rel10に反映
*モデムの複雑さはNokia資料より、Cat1を100
**世界の80%で使用中だが国内実績はない。
*** Rel(Release)、Cat(Category)は3GPPが定めている。
**世界の80%で使用中だが国内実績はない。
*** Rel(Release)、Cat(Category)は3GPPが定めている。
Cat1は携帯回線LTEそのまま(基地局の追加機構はほんのわずか)でMTCに対応している。周知のように携帯端末は移動することが前提となっており、接続可能な基地局に短いインターバルでアクセスし続ける必要がある(アタッチ)。またコネクション(接続)のプロセスの処理量も多い。Cat1はMTC向けに改善はされており、高速というメリットで有力な用途はあるが、用途は限られる。
知る限りではICメーカ3社(仏Sequans、イスラエルAltier、米Qualcomm)がCat1用ICはなどが製品を出荷している。各メーカとも用途はテレマティクス、POS,ビデオ監視、VoLTE(Voice over LTE 音声)などをあげている。メーカによってはLTEだけでなく3Gにも対応またWi-Fi機能を内蔵などしている。
国内でもCat1に関連する最近のニュースがいくつかある。
2016年1月 ソニーがAltierを2.5億ドルで買収
3月 Sequansは同社Cat1 ICでNTTドコモと相互運用試験に成功
4月 ジグソー(本社港区)はCat1通信モジュール開発スタート
(Altier ICを採用)
(Altier ICを採用)
7月 太陽誘電(本社台東区)はAltierとソフトバンクと協力しCat1
通信モジュール開発に成功
通信モジュール開発に成功
Cat-Mは運用帯域幅を1.4MHzにすることでより効率的なMTCを実現している。また間欠受信(DRX: Discontinuous Reception)と呼ばれる、これまでの規定では数秒周期でデータを受信できる仕組みを、その周期を最大40分程度まで長くできる(その間受信不可)拡張DRXを導入している。これにより接続できる基地局とのアクセスを減らせ、消費電力を大幅に削減できる。また通信方式をMTC向け最適化で、基地局からの通信距離を伸ばし、建物などの障害物の影のエリアにも電波の回り込みも実現し、利便性を高めている。
Sequansは2016年2月に世界初のCat-M ICをアナウンス(通信速度300Kbps・375Kbpsの2機種)しており、間もなく出荷が見込まれている。同社によれば、主な用途は電力・ガス・水道メータ、スマートウォッチ、健康モニター、産業用センサーなどである。Cat-Mは携帯回線ならではのセキュリティとカバレッジの広さはメリットが大きい。
Cat0はCat1/MとNB-IoTに挟まれてRel12(2014年)の規格だが位置づけが無地化しそうである。
3G/GSM回線によるM2M/IoT
上記のMTC(Cat1/0/M)の実績はこれからだが、既存携帯回線(3G/GSM)によるM2M/IoT通信は世界市場で急成長している。2013年実績と少々データは古いが、GSMA(GSM Association 通信キャリアを主体とした団体)のレポートによると2013年世界のM2M/IoT向けは1.95億回線(年平均約40%成長)、うちアジアは42%の8千万回線強としている。
同じGSMAの2016年の中国市場のレポートによれば中国の2015年実績は1億回線、2020年予測で3.5億回線としている(なお次頁のように同レポートで現在ゼロのNB-IoTは2020年に7.3億回線を予測)。言うまでもなく通信回線の先には通信モジュールとセンサーなどを組み合わせたセンサー端末が存在する。現在中国市場での3G通信モジュールは10ドル以下のようである。
乱暴な計算だがセンサー端末を10ドルとすると10ドル(端末)×1億=10億ドル(約1千億円)、一般にM2M/IoT全システムに占める端末の比率は数%と言われているので、5%としたときの3G/GSM回線ベースM2M/IoT市場は200億ドル(2兆円)、2020年予測に従えば700億ドル(7兆円)になる。2020年予測ではNB-IoTが加わるので、その倍以上の市場が新たに創出されることになる。
日本の携帯回線によるM2M/IoT
残念ながら世界や中国市場のような国内データは探せていない。
国内では3G通信モジュールを使用しているケースが多いようである。M2M/IoT用途では100Kbps程度の通信速度で十分なケースがほとんどなので、高速化(LTE)にする必然性は限られる。それでも最近まで3G通信モジュールが中国と比べると10倍以上していた。通信料金(SIMカードの使用料)が高い(中国では1ドル/月以下)などがネックとなって市場拡大を制約してきたようである。最近になって3G USBドングル価格が下がり、ウェブで2000円位で購入できる。また大手企業のソラコム(本社世田谷区)が国産3G USBドングル(エイビット(本社八王子市)製)をこの5月から本格販売を開始している。スターターキット(3G USBドングル+SIM(1000円分利用可)など)をウェブ価格5,980円で購入できる。
M2M/IoT向け通信回線数だけでなく、3G通信モジュールや3G USBドングルの市場データも見当たらない。M2M/IoT向けSIMの多くはMVMO(が担当していると想像している。総務省によるとMVMO(伝送路を有しない通信事業者 ケイ・オプティコム、IIJ、ビッグローブなど約210社)サービスの契約数は2015年末で1,150万である。多くがSIMフリースマホ・携帯電話・タブレット用と想像される。もしM2M/IoT向け市場サイズをご存知の方にご教授いただきたい。
国内ではCat1/0/MやNB-IoTもあまり話題になることはなく、存在感はほとんどない。携帯回線LPWAだけでなく先行する免許不要のLPWAも同様で、海外の状況を見るにつけ限りなく寂しい思いをしている。
⇒次ページは「携帯回線LPWA Ⅲ NB-IoT」
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