閑話 年寄りのiPhone考 妄言・暴言

916ロイターに「行政当局がアップル包囲網「iPhone」の市場支配を懸念」の記事で「総務省や公正取引委員会は大手電話会社(通信キャリア)3社に取引慣行の適正化を求めているが、その背後にいるアップルの影響力を問題視している」としている。この記事は82日公正取引委員会の発表「携帯電話市場における競争政策上の課題」を踏まえたものである。またこの記事で通信キャリア幹部がアップルの提示するレギュレーション(取り決め)条件が厳しいという発言を伝えている。
iPhoneを店舗の最も目立つ位置に置く・広告・ウェブ展開方法などを細かく定めている。
>販売ノルマを達成できなかった場合、一定額を支払わなければならない。
iPhoneを他社メーカ端末よりも安い価格で売らなければならない。
>下取りした端末は国内で転売してはいけないとアップルにから言われている。
公正取引委員会は8月に指針を発表、実態の改善が進まなければ、独占禁止法の基づく立憲に踏み切る可能性も否定できない、とある。
また1年以上前の産経ビズの記事には「2013年ドコモとアップルの契約には、新規契約の4割をiPhoneにすることで合意したとされる」とある。いまや富士通、ソニー、シャープなどの国産スマホメーカは瀕死の状態である。
以上は国内マスコミでタブーのようで報道されることはないが、業界では当たり前(2013年ドコモがiPhone取り扱い開始時から新規販売スマホの4割iPhoneとする情報はウェブ上で散見されていた)の話である。しかし先日iPhone7新発売に際しても、NHKをはじめとするテレビや新聞などのメディア取り扱いを見ると、上記の公正取引法違反とされる内容はまったく無視されている。相変わらずアップル・iPhone礼賛一色である。さらにはiPhoneには国産部品が大量に使用されているので、その売れ行きはこれらのメーカの業績に直結するなどと、日本製造業の救世主の扱いさえある。マスコミはどこを向いて、何をしたくてこのような報道をするのか不思議でならない。

別の観点からiPhoneの問題点を考えてみる。iPhoneの国内スマホ市場占有率はアウンコンサルティング2016年2月調査によれば66.2%2/3を占めている。ガラケーは相変わらず健闘してしるので、携帯端末に占めるスマホの割合は54%(残りはガラケー)、従って携帯端末全体に占めるiPhoneの割合は36%程度となる。
この調査は世界各国スマホ市場も調べているが、日本のiPhoneシェアはとびぬけて高く、携帯端末に占めるスマホの割合は先進国中最低である。日本はガラケー(ガラパゴス携帯)市場から、ガラケー・ガラホ?(ガラパゴススマホ)市場に移行したのかもしれない。

iPhone20076月に市場に投入された。競合は言うまでもなく、オープンソースのAndroidGoogleを中心としたOpen Handset Alliance2007年発表)で、200810月から世界の各社がAndroidスマホ発売を開始した。Androidアプリ開発環境はAndroid StudioまたはEclipseで、Android SDKが必須で(Linuxの高度な技術があればAndroid SDKなしでもアプリ開発はできるようであるが。。。。)、Googleはこの開発環境をコントロールすることで、オープンソースであるAndroidを支配している。従ってスマホアプリ開発に関するGoogleの制約はゆるい。蛇足のようだがAndroidOSはオープンソース元祖Linuxベースなので、Androidもまたオープンソースにする必要があるので、ソースコードも含めて誰でもがダウンロードし解析改編することもできる。この仕組みの負の側面を言えば、高度なLinux技術を持つ悪意ある人開発するマルウェアの存在を否定することはできない。従ってiPhoneに比べるとセキュリティという面では不安定である。またハードに関して言えば、Androidスマホのハードは小型Linuxパソコンイメージで開発可能なので多くのメーカが容易に取り組むことが可能である。

iPhoneAppleが独占製造販売しており、開発環境はもちろんアプリビジネスもApple支配下で、Androidのほぼ対極に位置しているクローズな仕組みをとっている。アプリ開発はApple提供のXcodeが必須なのはAndroid同様であるが、開発PCMACに限れられる(Windowsでも使えるようだが使用許諾契約違反)。またiPhone iOSWindowsのようなバージョンアップ互換は維持されていないようで、独自開発したアプリのバージョンアップは開発者が対応しなければならず、改編に必要な情報は限られているのでかなりの困難を伴うようである。従って業務に最適化したアプリを開発したいのもかかわらず、安易に取組むべきでないとされる。結果使い勝手の有無にかかわらず既成アプリの採用することを薦められるようである。昨今企業でのiPhone採用が活発であるが、業務全般に採用するのはかなり勇気のいる決断と思える。
余談だがMicrosoftはバージョンアップに際しても互換性維持のためにwsに膨大な費用をかけているので、あれこれ問題はあっても企業採用の条件となっている。またLinuxは最新技術を積極的に採用することもあり、バージョンアップ互換性は無視されるケースが少なくない。しかし以前のバージョンでもソースコード公開されているのでメンテ継続の道があり(有料ならば確実に)、独自開発のアプリも長期にわたって使用に耐えられる。

以下は年寄りの妄言・暴言

スマホ登場以来10年にも満たずに技術だけでなく、産業としても成熟期に入ったようである。低価格スマホの高機能化もあり、高級機種とされていたiPhoneSamsung Galaxyは世界シェアをお年続けており、それぞれ約12%程度である。AndroidスマホはGalaxyを含めて80%のシェアだが、日本は例外でiPhoneiOSが異様な高占有率状態である。
iPhone1993PDAPersonal Digital Assistant)を実現するとしてNewtonを鳴り物入りで製品化したが、これが使い勝手が悪い・重い・大きい・遅いなどの欠点から大失敗製品であった。これを踏まえたiPhoneは当初から完成度が高く、究極のレガシースタイルパーソナルコンピュータとされていた。20年以上前からパソコン分野ではシンクライアント(Thin Client)という概念が議論されていた。iPhone発売時はWindow全盛時で、パソコンのセキュリティ(マルウェア)やわずらわしいバージョンアップが大きな課題であった。この解消にアプリやデータをデータセンター(当時はクラウドという言葉はなかった)のサーバで処理(今流でいえばクラウドにアプリ処理・メモリーを依存)、インターネットアクセスとブラウザおよびディスプレイ機能をもつシンプルな(Thin)クライアント(端末)が提案されいくつかの製品が出荷され始めていた。
2008Google Chromeが登場し本格化するかに見えたのだが、究極のレガシータイプコンピュータiPhone登場で、この対極にあると言えるリッチクライアントが市場を制した。このiPhoneがリッチクライアントの究極だとすれば、もう一度シンクライアントが蘇ってきてもおかしくはない。
昨今のインターネットの高速化とクラウド技術の進歩、さらに巨大なハードソフトのリソースを必要とするAI技術を考えるとシンクライアント(多分違う名前になると思われるが)スマホが最も可能性のあるポストスマホと考えている。ポストスマホとしてVRVirtual Reality)が喧伝されているが、VR処理は複雑でデータ量も多いことから端末ですべてを処理するよりは、端末は高度なディスプレイ処理機能だけに専念し、クラウドがメインの処理とメモリーの対応をしたほうがスマートであろう。
膨大なデータとデータセンターそして卓越したソフト開発力を保有するGoogleの最も望ましい仕組みともいえるので、Googleの意向次第と思う。Google以外でシンクライアントベースのシステム展開ができそうなのは、Googleに近い能力があるAmazonFacebookくらいしかなさそうである。将来の情報インフラがこれら3社に依存するとすれば由々しきことであるが、残念ながら国内メーカが入り込めそうな場所は想像しにくい。さらにiPhoneの依存度が高くガラパゴス化した日本市場は、こうした一大変化に簡単に対応できるとは到底考えられない。

Appleにひざまずきその靴先をなめ、顧客を無視して金儲けに徹している携帯通信キャリアは、以上のシナリオを夢にも思っていないように見える。シンクライアントを端末とするシステムのあらゆるソフトと設備を擁するGoogleの決断次第で、まったく新しい情報インフラが明日にでも実現可能のはずである。端末(携帯端末)は高速通信機能と高機能ディスプレイを持ち、クラウド・AI・ビッグデータなどと密接にリンクした想像もできないものになるであろう。さほど遠い将来ではなさそうなので、よみぢの土産話に最適で楽しみにしている。

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